内向型に幸あれ

私は内向型か外向型かといえば、内向型だ。

薄々思っていたことが大学の心理学の授業で確信になって以来、私らしさとして受け入れてきた。

 

というか、そもそも実生活において、微塵も外向的要素がない。だから、心理検査や何かする以前に内向型であることは疑いようもない事実だ。

「お一人様」なんて言葉が世に出る以前、女子高生の頃から、食べたいものがあれば1人で外食していた。独身の時は、川辺や公園に1人で出かけてパンやファストフードを食べるのが好きだった。ただそうしたいからそうするだけだ。

休息が欲しい時は、家でインターネットしてるか、もしくは庭で植物を観察したり手入れしたりして、1人で過ごす。

結婚式の二次会とか、宴会とか、研修先での名刺交換とか、言っちゃあ悪いが帰りたくなる。

中途半端な人に、辛いことがあったなら聞くよ?と言われても、結構です、と思ってしまう。

そもそも、付き合いがある人のうちのほとんどを友達だと認識しておらず、重要視もしていない(ひどいけど、実際そうなんだもん)。ただ、社会的な必要性を感じるからメールや年賀状やお祝いなどはしている。ほんとうの友達とは、年に2回ぐらい会えればそれで充分だ。

今更苦悩しているのは、ガールズトークができないこと。ガールズトークにストレスを感じるからと距離を置きっぱなしのままおばさんになった今、奥様の世間話には愛想笑いで固まっているしかない。彼女らの話題について、話したいこともなければ、聞きたい話もない。近所の奥さんキャラ、お嫁さんキャラとしては最悪だ。

ちなみに、コミュニケーションは普通程度にはできる。が、面倒くさいと思う。ユーモアの能力とかはほぼない。

小、中、高、大とふつーに友達がいて、ふつーに人と仕事してきた。ただ、協力してやりましょう、密な連携を、とか言われるとちょっとつらい。グループワークやセミナーも嫌いだ。1人でさっさとワークをやるか、あまりコミットせず傍観しておくか、そうやって適当にこなすことが多い。

 

私自身、内向的であることを受け入れて比較的長い期間生きてきたが、やっぱり世の中は外向的である方が生きやすいと思う。

学校でも仕事でも、外向的である方が目立つし、評価も高くなる。スクールカーストのトップは外向能力が高い人だろうし、同じ能力だったとしても賞賛されるのはプレゼン上手な外向型だろう。

それに、絆とか、助け合いとか、その手の善意の言葉や行動も、場合によっては内向的な人への無意識的な暴力をはらんでいる。「みんなで」頑張ろう、が、正義として振りかざされ、1人で考えたり作業したりすることを阻む。1人でいることを異質で異常なものとして排除しようとする。

理解されにくく、表明しにくく、自罰的に、自虐的に、自分の性質を訳もわからず持ったまま立ち尽くしてる人がきっと多いだろうと思う。

 

最近、読んだ本。

原題は、「Quiet」。なんでこんなださい邦題つけちゃったのかな。静かなる力、でいいのにね。

アメリカのビジネス本特有の、誰々がこうして成功した、みたいな語りが続くのはちょっと閉口だけど、内向型の人の自己肯定や自己理解に役立つと思う。

著者は心理学者ではないが、内向型である著者自身の取材や体験とあわせて、心理学や生理学の研究がたくさん引用されていているのが面白い。

内向型の人には頷けるエピソードがたくさん出てくる。私も、この本の登場人物と同じく、内向型に向いてないオフィスで、内向型に向いてない複数同時並行で慌ただしい仕事をして、エネルギーが枯渇してくたくたになってる1人だ。この本に出てくる教授のように、疲れたらトイレの個室で小休憩を取っていて、下の隙間から靴が見えないように足を引っ込めて座っている…笑

この本の中で言われる内向型には、共感性や繊細さ、敏感さも含まれている。著者は他人の心にも敏感なようだけど、私は人の感情には非同調的なので、腑に落ちない部分もあるにはある。一応あとがきに、心理学の世界でいう(例えばビッグファイブとかの)内向性とは定義が違うよ、ということが書かれていて、一応納得。そういえばこの本心理学の本じゃなかった。

 

アメリカといえば外向型の総本山で、アメリカンジョークを交えてユーモアたっぷりに堂々と演説する人が活躍するイメージ。日本のパーリィピーポーもびっくりの社交家がいっぱいいるのだろうなと思う。そんな中で、弁護士という花形の仕事を退いて、こつこつ取材して、アメリカ文化の否定にもなりかねないこういう本を発表できる彼女は強いよね。それこそ、静かなる力、だ。

この本では、アジア圏には内向的であることをよしとする文化があることが書かれている(ちょっと内向型論のために都合よく書きすぎのようにも思うけど)。確かに、日本はのび太くんがメインキャラとして許される世の中だし、アメリカに比べたら内向型が生きやすいのかも。

まあ、のび太くんよろしく、学校生活が合わなくて小中学生の頃苦労する内向型も多いと思うんだけどね。内向型の静かな力が、環境や動機づけさえ調えば、いつかドラえもんを生み出すかもしれない。ということが理解される世であってほしいなと切に思う。